口腔ケアと誤嚥性肺炎について
誤嚥性肺炎と虫歯菌・歯周病菌
高齢者が命を落とす原因に「肺炎」があります。日本人の死因の上位に並ぶ病気です。
「肺炎」とは細菌やウィルスが肺の炎症を引き起こす病気の総称で、その種類はいくつかあります。
高齢になると飲み込む機能が低下、食べ物や唾液などが誤って気管や肺に入ってしまうことがあります。それを誤嚥(ごえん)と言い、誤嚥によって起こる肺炎が「誤嚥性肺炎」です。
誤嚥は食事中だけに起こるわけではありません。就寝中に唾液が気道に入り、自覚症状のない「むせ」を繰り返し起こしている場合もあります。誤嚥で問題なのは、口の中の細菌が気管や肺に入り込むことです。侵入した細菌が肺で増殖し肺炎を引き起こし悪化させ、死に至ることもあります。口の中の細菌には、虫歯菌や歯周病菌などがあります。特に歯周病菌による歯周病は、45歳以上の日本人の約半数が患っているという報告があり、初期の段階では自覚症状がないので気づかないという方もいます。
歯周病菌は歯みがきなどの日常的なケアで除去することは難しく、放置することで口の中が歯周病菌であふれている状態になってしまうということもあります。
口腔ケアの重要性
歯周病を予防するのに必要なのが「口腔ケア」です。「口腔ケア」とは、口腔内の環境を良好に保つためのブラッシングや歯科医師によるクリーニング、口腔周辺のリハビリを行うことなどの総称です。
歯科医院で行うクリーニングは、毎日のブラッシングでは落とせないプラークや歯石を専門の道具できれいに落とします。定期的に行うことで口腔内の歯周病菌の発生、増殖を防ぐことができます。
介護者によるケアのポイント
介護を受けているご高齢の方は、介護者による「口腔ケア」が重要になります。
介護者によるケアのポイントは以下の通りです。
- 誤嚥をしないように体位を整える。
- 口の中や口唇が乾燥していたら保湿をする。
- 歯ブラシでブラッシング、舌の清掃など口腔内をきれいにする。
- 口腔内のマッサージで唾液の分泌を促す。
- 口腔内外の保湿ケアを行う。
口腔内外を清潔に保つ他にも大切なことがあります。それは、しっかり発音・発声しコミュニケーションをとることや、しっかり咀嚼して食事を楽しむことです。どちらも脳を刺激するとともに「口腔ケア」にもなります。高齢者を対象に「口腔ケア」を実践した人たちとしなかった人たちを比較した調査で、ケアをした人たちは「誤嚥性肺炎」の発症率が減少したという報告があります。
是非、衛生士さんから受けておられる歯ブラシ指導を基に、ご自身でケアをしてみてください。